歯科医師のスタートは京都大学医学部付属病院の口腔外科で、主な治療対象患者様は、親知らずが痛い。怪我で顎を骨折した。膿の袋が大きくなり摘出してほしい。骨格的な異常でかみ合わせが悪いので、手術をして咬めるようにしてほしい。口腔がんの治療。等でした。
そのような患者様を治療させていただく中で、技術と知識を研鑽してきました。それこそ刀職人が、限界まで研ぎ澄まされた刀1本を作る意気込みで、、、(笑)
歯の予防の大切さ『natural beauty』を
伝える歯科医院をつくりたい
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歯科医師臨床23年の中で最初の15年くらいは、
どちらかというとすでに悪くなってしまった方を、
一生懸命もとに近づけるように治す歯科医師でした。
「本質的には、治っていない。」
いったん悪くなってしまったものは、
修復することはできても、もとにはもどらない
歯科医師のスタートは京都大学医学部付属病院の口腔外科で、主な治療対象患者様は、親知らずが痛い。怪我で顎を骨折した。膿の袋が大きくなり摘出してほしい。骨格的な異常でかみ合わせが悪いので、手術をして咬めるようにしてほしい。口腔がんの治療。等でした。
そのような患者様を治療させていただく中で、技術と知識を研鑽してきました。それこそ刀職人が、限界まで研ぎ澄まされた刀1本を作る意気込みで、、、(笑)
また夜間当直をしているとき、救急で急な歯の痛みや入れ歯の不具合で来院される患者様を多く診察させていただく中で、一般的な歯科医院が空いている時間に通院することができない働く方や忙しい方がたくさんおられるという事実を知りました。
そういう方々にも安心して定期的に来院していただける開業医として、夜10時まで診療、土曜日曜祝日診療(年362日診療で元旦も診療)を行うにしさんそう歯科を開院させていただきました。
一般診療を行うにあたって、保険診療、自由診療の区別なく、患者様の希望に応じて、ベストな方法を模索して取り組んでまいりました。保険診療にもこだわりを持って、制限された材料や治療方法の中でも、最善を尽くしてきたつもりでした。
しかし、一旦よくなって、喜んでいただいても、何年かすると外れてきたり、虫歯の再発や、歯周病の再発を繰り返す患者様もおられて、またその悪くなってしまっている状態に、対応する。患者様と頭を抱える日々を過ごしてきました。
一例として、示します
以前部分的な銀歯をしている患者様が外れてこられました。
一部虫歯の再発を認められる状態です。
以前に治療していた歯が虫歯の再発によって部分的な銀歯が外れて、象牙質がむき出しになっている(茶色の部分)
再発している部分を取り除き、保険診療の範囲内で、部分的な銀歯を装着した。
数年後に、一部金属と歯の間に隙間ができてきた。再発の傾向がみられる。
虫歯が再発し、部分的な銀歯が脱離した。この状態になると、以前よりも削除している歯の部分が多く、治療の難易度が上がる。
再発を防ぐために歯質に接着しやすいセラミックインレーの治療を行った。再発率の低減が見込める。
このような患者さまはとても多く、治療を行ったとしても予防コンセプトにのっとった治療、
メインテナンスができていない場合は、再発が多くなります。
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金属アレルギーの問題もたくさんありました。これは非常に難しい問題です。保険の診療では、基本的に、金属を使う治療がとても多く、そのような治療を選択しているケースがとても多いからです。わたくしが治療させていただいた患者様も治療した後、金属アレルギーがわかる患者様も少なからずおられました。
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そういうことをたくさん積み重ねるうちに、
悪くなってしまっている状態を治すよりも、
そもそも悪くしないことの重要性を痛感していきました。
にしさんそう歯科を開院してから12年、患者様に対して、予防歯科の重要性をしっかり伝えられる歯科医院を作りたいとの思いから、2020年1月に守口駅前歯科の横の土地を購入しました。
2016年ころからそういう医院を作るための土地を探しておりましたが、なかなかぴったりな土地が見つからずなかば諦めかけていたころの良いご縁でした。
工務店を選ぶ際においては、街並みに合わせ、また自然美の追求を表現したいと思い、木造建築で木の美しさで定評のある滋賀県の谷口工務店さんにお願いをして、また医院の設計は、東京銀座で歯科医院設計の20年の実績をもつメディカルデザイン水口様にお願いしました。
診療室の基本設計が終盤にさしかかった3月末ころ、新型コロナウイルスの問題が起こってきて、医療法人靖正会(にしさんそう歯科、萱島駅前歯科、守口駅前歯科)では、3密を防ぎ、患者様に対する感染予防と、スタッフの安全のために縮小診療しました。
縮小診療を行うことで、患者様の人数を3分の1に制限させていただき、幸いにも当院関連のクラスターは発生せず安堵しました。
しかし患者様を減らすということは、収入の部分が減ります。飛沫感染のリスクがあるという見解でしたので、設備として口腔外バキュームの増設、各種滅菌体制の見直し、感染対策のためのスタッフ教育を再度強化しました。
また、患者様の立場におかれましても、現状急がないでもよいとお考えの場合、受診控えもありますので、患者様の数を制限していることに加え、こちらとしては処置を受けて入れている状態の患者様におかれましても処置が進まず、先行きが見えません。
4月から5月の緊急事態宣言のころには、患者様の数もこれ以上少なくすること、また少なくなることが考えられて、また日本中でクラスター感染がおこり、都市機能がロックダウンし、現在の既存医院3院の継続、同時に患者様やスタッフの安全が守れるのか?このようなときに新しい院を作ることは、憚られる。
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既存の医院をしっかり守ることが最優先事項である。
新規医院を開院することを断念しようかと真剣に何日も何日も考えました。
今回購入した土地に対して借り入れも多くしておりましたので、見通しが立たないまま開院してもうまくたちあがらなければ、結局多くの方にご迷惑をおかけすることになります。
設計はかなり進んでおりましたが、断念して土地を売却することも考えました。いろいろな方に相談し、いろいろな意見を頂戴しました。
いったん延期したほうがよい、これからは、法人として大きくしていく時代ではない。これをきっかけに中止した方が賢明ではないか?多くの意見がそうでありました。
中止や、延期することは大きな判断なので、慎重に考える必要があり、夜も寝れない日が続き、新型コロナウイルスや今後のことにしっかり向き合いました。
新型コロナウイルスやその他感染症のことを勉強していくにつれ、すこしづつ状況が見えてまいりました。それは、今回新型コロナウイルスが終息に向かっていったとしても、次の未知の病原体の感染症はまた起こってくるであろう。
これからの時代は、予防歯科の重要性はもっと大きくなってくる。新たな感染症時代がきてもしっかり歯科の予防から全身の予防につなげていくことがとても大切なことであると考えました。
実際、新型コロナウイルスに感染しても肺炎が重篤化する方と、そうでない方がおられる。理由として、肺炎が重篤化するには、日ごろの口腔内の衛生管理がとても重要で、新型コロナウイルスでダメージを負った呼吸器に口腔内の細菌が再感染して重篤化しているとの報告があります。
そうであるならこの新歯科医院の社会的な意義は、今後もっと大きくなると考えることもできます。
一般論でありますが、歯科は、もともと滅菌管理、感染予防ができているが、しかし社会のニーズとしてより厳密な滅菌管理ができる医院が求められている。
また日ごろの予防歯科をしっかり患者様にお伝えできる患者様に対する教育体制。世界基準の滅菌管理ができる歯科医院を今の時代だからこそ、しっかり作るべきだと考えなおしました。
もちろんその分費用はかかることですが、しかしそれを追求することで、患者様に安心していただき、口腔予防管理を進めるうえで、今後の未知のウイルスや細菌の大感染時代に対応できる歯科医院をつくることを決意しました。
新規開院予定を2021年2月から9月に延期決定し、患者さまの動線や、診療室の換気、空調。滅菌準備室の設計、機材の選定から一からやり直しました。
よって設計期間は2020年1月から11月までと十分に時間をかけて慎重に行いました。結果、滅菌管理に十分に配慮できた設計に誇りを持てるようになりました。
滅菌対策管理について歯科医療の現場には、機材、器具が多くあり、整頓できず雑然としてしまいがちです。
そこで、わたしたちは設計段階から、機材、器具の配置、収納量を十分に考え図面に落とし込みました。診療が終了して、掃除をして帰るときには、診療室には、歯科治療ユニット(診療台)のみが広い空間の中にあるだけとして、すべての機材、器具を収納することとしました。今後、機材や器具が増えても十分に対応できるだけの設計としました。
理由は掃除が行き届きやすいからです。滅菌管理の基本は掃除です。
掃除が行き届いてなければ、いかに高価な滅菌設備があっても、意味を成しません。整頓されているから掃除しやすい。掃除しやすいから清潔に保ちやすい。
そんな当たり前を実現できる医院を目指しています。